蓼科生活 vol.19 遊ぶことは、生きること。
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八ヶ岳連峰を望む大地に広がる農地。冷涼な空気と豊かな日照が、味わい深い野菜を育む

2021年夏に開設され、早くも夏の風物詩として愛されている『ツキノキマルシェ』。
野菜の新鮮さ、おいしさはもちろん、買い物が楽しいと評判だ。
ブランドを立ち上げ、地域と別荘地を繋げた仕掛人にお会いした。

朝採り野菜のお裾分け

 『ツキノキマルシェ』は、その名の通り『チェルトの森』別荘地にほど近い槻木地区の農家約10軒が、朝採り野菜を届けてくれる〝畑直結〟のマルシェだ。管理事務所横のテラスにて、7月中旬から9月下旬の毎週日曜日に開催され、多くの人で賑わった。

夏の風物詩になってきた「ツキノキマルシェ」。
販売開始前に並んで朝採り野菜の到着を待つ人もいる

栽培されている作物は出店する農家によって違うため、並ぶ野菜も多種多様。別荘地近隣の畑から、採れたての旬がやってくる

 長年別荘を利用していても、地域との繋がりはほとんどなく、『ツキノキマルシェ』を通して初めて槻木地区の魅力を知ったというオーナーは多い。
 『チェルトの森』の間近にある槻木地区は、標高1,000mを超える高原野菜の栽培が盛んなエリア。昼夜の寒暖差が大きく、甘みやうま味が濃縮された瑞々しい野菜が育つ。また、八ヶ岳の伏流水が引かれた水田では、稲が丹精込めて育てられている。

蓼科山をバックにネギ苗を植え付ける「ツキノキマルシェ」参加農家の三浦さん

大自然に包まれた畑には、レタス、キャベツ、ブロッコリー、トマト、ネギ、ニンニク…多種類の野菜が作付けされている

 『ツキノキマルシェ』を立案・プロデュースした小林正彦さんは槻木地区在住で、「採れたての野菜の美味しさは、ここに暮らして毎日食べている自分たちが一番よく知っています。チェルトの森のオーナーの皆さんにもぜひ食べて喜んでもらえたら、地元農家の活性化に繋がるはず」と、常々考えていたという。
 小林さんは、大手精密機器メーカーのプロダクトデザイナーとして活躍していた経歴の持ち主で、定年を機にそのセンスと手腕を地域振興に惜しみなく発揮。2021年春、『チェルトの森管理事務所』に『ツキノキマルシェ』出店を提案した。

別荘地と槻木地区の交流を通して地域の魅力を高めたいと語る「ツキノキマルシェ」発起人・小林正彦さん。
2021年、2022年と、行列ができるほどの人気を博している

 時を同じく『チェルトの森管理事務所』においても「別荘地と地域が一体となり、近隣エリア全体の魅力を向上させていきたい」と、地域連携を検討しており、小林さんの提案を歓迎。思いを一つに『ツキノキマルシェ』開設に向かって動きだした。

お洒落においしくSDGs

 「手塩にかけた野菜が、地域の魅力に触れてもらうきっかけになるのなら」と、多くの農家が小林さんの呼びかけに賛同し、2021年夏、『ツキノキマルシェ』は幸先よくスタート。当初、採りきれないほど実った野菜や規格外の形・大きさの野菜を無駄にしない『SDGs』の観点も加味していたマルシェだが、舌の肥えたオーナーの反響を受け、しだいに生産農家の皆さんも選りすぐりの品を持ち寄るようになった。

「ツキノキマルシェ」は、農家一軒一軒が個別の箱に入れて持ち寄るスタイル。それぞれ個性があって、野菜選びが楽しくなる販売開始前に並んで朝採り野菜の到着を待つ人もいる

大きすぎたり曲がっていたり、市場に流通しない規格外の野菜も出品される。形が不揃いでも、朝採りのおいしさは格別だ

スーパーや青果店では見かけない花オクラなど、珍しいエディブルフラワーも出品される

イタリアでポルチーニと呼ばれる「ヤマドリダケ」など、八ヶ岳の天然キノコも並ぶ

 また、「農家が愛情込めて育てた野菜を一つ一つ大切に扱い、まるでおしゃれな晴れ着を着せて陳列しているかのよう」と好評なのが、トータルデザインされたブランドパッケージ。小林さんは都会の感性を意識しながら、ブランドロゴやディスプレイボックスなどを手掛けているという。
 思わず手に取りたくなるお洒落で洗練された品々が、今年の夏も所狭しとテラスに並ぶ。

紙のラッピング帯で束ねたゴボウ。
洗練されたロゴデザインが、野菜をお洒落に魅せる

白と茶色の模様が目を引く「とら豆」。
シンプルなロゴマークが「ツキノキ」ブランドをさりげなくアピールする

地域一体!楽しさ発展進行形

 採れたて野菜のみならず、槻木地区の活性化を図るため、小林さんは『ツキトシカ地域ブランド振興会』を立ち上げ、商品力を強化している。槻木の耕作放棄地でミツバチを飼育し、非加熱・無添加・無調整の純粋ハチミツを手作りしている上野友滉(ともひろ)さんとコラボした〝ツキノキのハチミツ〟。自然農法によるえごまを丁寧に搾った〝槻木のえごま油(生一番搾り)〟。『チェルトの森』在住のクラフト作家が手掛けるオブジェやアクセサリーなど……ラインナップはますます充実。

槻木と富士見町でミツバチを飼育している上野友滉さん。
ハチミツを加熱処理すると栄養素が損なわれるため、採れたての天然ハチミツを濾過するだけで瓶詰めしている

6年前、草が伸び放題だった耕作放棄地を整備し巣箱を設置。日々の手入れを大切に、ミツバチの健全な生育環境を整えている

■広がりを見せる「ツキノキマルシェ」ラインナップ

(中央)森の中に咲くニセアカシアの木を蜜源とする「ツキノキのハチミツ」。
クセのないやさしい口当たりで、アカシアの上品な香りとさらりとした甘みが口の中に広がる

(左)夏に採ったえごまの葉と秋に実った種を搾った「えごま油」。
うっすらと緑色で、オメガ3(α-リノレン酸)をたっぷり含む

(右)ツキノキマルシェ・クラフト部による手作りのブローチ。鹿や欅の木をモチーフにした刺繍が可愛らしい
また、ロゴが刻印されたディスプレイ用の木箱は、小林さんの手作り。ヨーロッパのマルシェのようで心がはずむ

 さらに、野菜や果実の収穫が楽しめる体験農園の開設や、野菜作りを始めたい人への家庭菜園の紹介など、「別荘オーナーと地元農家の交流を深める活動も進めていきたい」とビジョンを描いている。
 蓼科高原の美しい自然風景と共に、地元・槻木の旬を味わい、大らかな山里の暮らしに触れる。『ツキノキマルシェ』が、蓼科生活の楽しさをさらに広げてくれるだろう。

「ツキノキマルシェ」参加農家・三浦さんの畑では、ポリフェノール豊富な健康ベリーとして注目のカシスが、夏の収穫に向けて実を結んでいる。今後は、カシス摘みや野菜の収穫が楽しめる体験農園の開設も検討している

https://tsukinokimar.base.shop/