蓼科生活Vol.9 蓼科に来る、 蓼科に居る、 ただそれだけでいい。”
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光が燦々と降り注ぐサンデッキでくつろぐMさんご夫妻。山並みや森を見晴らす特等席だ

別荘の利用スタイルは、人それぞれ。
山登りの拠点、庭づくり、アトリエ…など、想い想いの蓼科生活を愉しんでいる。
今回訪ねたMさんは、“特別に何もしないで、のんびり過ごす”そんなスタイル。
雑多な日常生活を離れ、大自然に抱かれることで心満たされる。
原点ともいえる別荘ライフに触れてみた。

夢の実現に向かって

 日々仕事に追われ、時間にも気持ちにも余裕の持てない人にこそ、別荘は必要なのではないだろうか。平成28年の春に別荘を新築して以来、金曜の晩に横浜の自宅から蓼科へ向かい、日曜の午前中に帰宅する週末利用を、月に2度のペースで続けているMさんのもとを訪ね、そう思った。
 気持ちをリフレッシュし日頃のストレスを解消するには、雑多な日常から離れ、非日常的な自然環境に身を置くことが効果的だ。Mさんは、まさにそれを実証している。
 Mさんが、別荘に関心を持ちはじめたのは、10年以上前。ご夫婦共に山を眺めるのが好きで、八ヶ岳の麓へ愛犬を連れてドライブに行くことが多く、「いつかこんな所で暮らせたらなぁ」と憧れ続けていた。しかしながら、「もし別荘を持てたとしても、仕事が忙しくてなかなか利用できないのでは」と迷いもあり、夢を先延ばしにしていたという。
 とは言え何年経っても多忙な毎日から解放されそうな気配はなく、60歳を過ぎてもゆとりができるとは思えない状況。「いつまでも迷っていたら、そのうち自分の身体が衰え、森の暮らしを楽しむ体力がなくなってしまうかもしれない」そんな心配が頭をよぎり、『忙しいから』という先延ばしの理由を封印し、別荘購入へ向けて積極的に動きはじめた。

鳴岩街区から望む阿弥陀岳をはじめとする八ヶ岳

別荘地内から望む甲斐駒ヶ岳をはじめとする南アルプス

非日常を楽しむために

 Mさんは、10数年にわたり、八ヶ岳山麓へドライブに来ていたので、清里、小淵沢、富士見、原村、蓼科エリアに点在している別荘地の特徴をほぼ把握していた。その中で、ご自身の要望を最も満たす別荘地として、『蓼科高原チェルトの森』を選択した。観光地の喧噪から離れた静寂な環境、冬季も安心な別荘地管理、そして山並みを一望できるロケーションに強く惹かれたという。
 Mさんが購入した土地は、『蓼科高原チェルトの森』のなかでも特に眺望の良いエリアで、北アルプスや御嶽山を望む西傾斜の高台の区画。山を眺めるために八ヶ岳山麓へ来ていたMさんにとっては、まさに満願成就であった。
 しかしながらMさんの土地は、見晴らしこそ素晴らしいものの、勾配がきつく、初めて見た時には、「こんな所に家が建つのだろうか?」と思ったほど。そこで、『チェルトの森』で数多くの別荘建築を手掛けてきた実績のある工務店に相談したところ、傾斜地の勾配を巧みに活かした展望台のような別荘を実現。Mさんの心配を見事に解決してくれた。

傾斜地の勾配に沿って建てられたM山荘

北西方向に広がる穂高連峰をはじめとする北アルプスの眺望

眼下に森が広がる展望台のようなサンデッキ

 「普通、樹は下から見上げるものですが、ここでは、樹を見下ろす感覚。この空中に浮いているような高い目線が、まさしく非日常を演出してくれるのです」とご主人。
 樹々を見下ろす開放感はもちろん、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山を、室内から望むパノラマビューは究極の非日常である。
 「朝陽を受けて輝く山々、1日の中で刻々と変化する森の風景は表情豊かで、何時間見ていても、まったく飽きません。夜は、星々が空を埋め尽くさんばかりに光輝き、圧倒されます。夏には天の川がはっきり見えて驚きました。今度、天体望遠鏡を買おうと思っているんですよ」と話は尽きない。
 初夏の新緑や秋の紅葉など四季折々の風景も色鮮やかで素晴らしいが、中でも雪景色が好きだというMさん。冬の来荘時も快適に過ごせるようにと、床暖房をはじめ水抜き水通し作業が不要な蓄熱暖房設備を導入し、厳冬期の備えは万全だ。

眺望方向に大きな開口部を設けたリビングダイニング。
展望台で暮らしているような非日常性が味わえる

2階ベッドルームの目線はさらに高く、窓の下に森が広がっている

2階ベッドルームから見下ろす吹抜のリビングダイニング。
縦方向の広がりが伸びやかで心地よい

自然が描く蓼科劇場

 いざ別荘が完成すると、あれこれ考えずにとにかく月に二度、努めて蓼科へ行くようにしたというMさん。
 「ここに来て、何かするわけではないのです。ただここに居る、それだけで気持ちが晴れ晴れとし、大らかになれる。澄んだ空気、四季の彩り、山の眺望、そのどれもが横浜では出会えないものばかり。朝、目が覚めて窓の向こうに広がる森を眺めると、本当に気持ちがいい。非日常を味わうことで、こんなに気持ちがリフレッシュできるとは、有り難いですね」とご主人。
 蓼科で心身を休ませ、気持ちを切り替えられる効果なのか、横浜での暮らしにもメリハリがつき、以前にも増して仕事に集中できるようになったという。

吹抜の壁面に設けたピクチャーウインドウには、緑の森が額縁に切り取られたように浮かびあがる

 「今朝、鳥が賑やかなので外に出てみると、薪の上に巣が作ってあったんです。つがいの二羽が、楽しそうに木から木へ飛び廻っていて、いつまで経っても卵を温めないので、雛がかえるのかしらと心配ですね」と奥様。
 その鳥は、野鳥図鑑で調べてみたところ、どうやらキセキレイらしい。
 「2週間前には、そこに巣が無かったので、ほんと、来る度に発見があって楽しいですよ」
 蓼科へ来るだけで味わえる四季の劇的な移ろいや小さな発見の数々は、全てがドラマチック。これ以上のエンターテインメントは、そうそうあるものではない。

白樺の枝にとまり羽を休めるキセキレイ。「チチッ チチッ」と鳴きながらM 山荘の周りを飛び交っていた

勝手口の近くに積み上げてあった薪の合間に作られた
キセキレイの巣

森を眺めながら入浴できるバスルーム。
最高に気持ちよく、温泉へ行くことが減ったという

別荘の原点を再認識

 さて、別荘に居るだけでも楽しみは尽きないが、散歩に出掛ければ、『チェルトの森』にはパァッと視界が開ける幹線道路や槻の池などがあり、八ヶ岳をはじめとするダイナミックな山々の眺望が楽しめる。別荘が完成してから1年以上経ち、今は行動範囲が別荘地内で完結しているが、それでも充分すぎるほど楽しんでいるという。
 帰りに直売所で新鮮な野菜を買って帰るのも楽しみの一つ。「横浜の自宅で、蓼科を味わいかえすのもいいものですよ」と奥様。

槻の池から望む天狗岳をはじめとする北八ヶ岳

林間に顔を出す八ヶ岳の主峰・赤岳と阿弥陀岳

大きな開口部から恵まれた眺望を室内に取り込むM山荘。
前方からの視線を受けない傾斜地の特徴を利用し、開放感とプライバシーを両立している

 別荘を持ったとしても、忙しくてなかなか行く気持ちになれないのではと思っていたMさんだが、そんな心配はどこ吹く風。忙しいからこそ、別荘の真価がフルに発揮されている。
 もし日常生活に追われて、別荘から遠のいている方がいらしたら、とりあえず何も考えずに蓼科へ足を運んでみてはいかがだろう。澄み渡る空気、林間をそよぐ涼風、ありのままの自然風景が、極上のリラクセーションをもたらしてくれるはず。
 Mさんの別荘ライフは、都会の雑踏を離れ、自然の中でリフレッシュするという別荘の原点を再認識させてくれた。