パワースポットを辿る、ふらっと町中散歩道
寒くなってくると外を歩くのが何かと億劫になってきますよね。そこで、昨今、我が国有数のパワースポットとして脚光を浴びている諏訪大社上社前宮から上社本宮へ向かう参道へ出掛け、冬になると出不精になる気持ちに喝!を入れてきました。
上社前宮は、富士山と立山を結ぶレイライン(聖地が一直線に並ぶ現象)と中央構造線がクロスする場所にあり、日本最大級のパワースポットとの呼び声が高い。中央構造線とは我が国最長の断層で、不思議なことに伊勢神宮をはじめ、高天原(たかまがはら)神話発祥の地といわれる九州の幣立神宮、四国を代表する山岳信仰の霊山・石鎚山、弘法大師開創の高野山金剛峯寺、愛知県の豊川稲荷、諏訪大社上社、鹿島神宮など名だたる神社仏閣が、九州から関東にかけて中央構造線をなぞるように並んでいる。
パワースポットとは、大地から湧き出るエネルギーを体感できる場所で、風水でいうところの『気の吹き出し口』。神代の古代人たちは、中央構造線と富士山からのレイラインが交わる諏訪の地で大自然が放つ〝気〟を感じ、神聖な場所として崇め、神社を設けたのかもしれない。
前宮入口の鳥居をくぐり、参道を上っていくと神原(ごうばら)と呼ばれている広場のような場所があり、林立する大木の中に社務所や社が佇んでいた。案内板によると中世まで諏訪祭政の行われた政庁の場だったという。
第二の鳥居をくぐり石段を上がり切ると石畳の坂道が続き、上って行くとその先に森に包まれた前宮の拝殿が見えてくる。
ピンッと張り詰めた空気、高々と天を突く四本の御柱、ご神水・水眼(すいが)の音色、拝殿に向かって手を合わせ目を閉じた時、山、森、水、風、社、その全てが一体となった〝気〟のエネルギーに触れたような感覚を覚えた。上社前宮は、パワースポットなどという流行語では言い表せない、太古の歴史が宿る厳かな空気感に満ちている。
そして参拝後、上社本宮に向かって歩いて行くと高部交差点を過ぎた所に『神長官守矢史料館』と書かれた看板を見つけた。興味をそそられ門をくぐってみると、古代を連想させる土壁と板壁を組み合わせた不思議な建物が建っていた。
守矢氏とは古代から明治時代の初めまで諏訪大社上社の神長官(じんちょうかん)をという役職を勤めてきた氏族で、この史料館の建物は、茅野出身の建築家・藤森照信氏が手掛けた独創的な建築物。「諏訪の自然と中世の信仰」のイメージを取り入れながら新たな発想で創り上げたという。
史料館内には、守矢家に伝わる古文書をはじめ、上社前宮で行われていた神事・御頭祭の再現展示が行われており、太古から続く狩猟生活の儀礼はインパクト大。厳しい自然界で生き抜いてきた諏訪の人々の逞しさが伝わってくる。
そして史料館の奥の野原へ視線を向けると、インパクトがさらに加速。「空飛ぶ泥舟」と名付けられた茶室が青空をバックに浮かび、その奥にはもう一つの茶室「高過庵」が天然木の幹の先端に建っている。
まさに異世界に迷い込んだかのような奇想天外ワールド。これほどインパクトがある場所が茅野にあったとは…。チェルトの森別荘地と同じ市内でも、知らない場所がまだまだある。