厳しい寒さが生む「献上寒晒しそば」
今冬の蓼科高原は雪が多く、山も森も里も真っ白。ここ数年、雪不足が心配されるほど少なかったのが嘘のよう。幻想的な雪景色が広がっている。
そんな雪に覆われた蓼科山の麓で、「八ヶ岳蕎麦切りの会」の皆さんが、厳しい寒さを活用した“寒晒しそば”の仕込みを行っている。
“寒晒しそば”とは、そばの実を山奥の清流に10日間ほど晒し、その後約2ヶ月間にわたり屋外の冷気に晒して乾燥させる手間と時間をたっぷりかけた特別なそば。江戸時代に諏訪の高島藩が徳川将軍家に献上していた由緒正しい歴史を持つ。
そばの実を詰めた網袋を清流まで運び、氷点下の山間で流水に晒す作業はかなり過酷なもの。江戸時代の製法を受け継ぎ、諏訪地方の伝統文化を後世に伝えていきたいという信念なくしてはできないものだ。
激寒の流水と冷気に晒されたそばの実は引き締まり、雑味が抜けて甘味を増すと言われている。
真冬の乾燥作業が終了したそばの実は、温度・湿度を管理した貯蔵庫で保管され、江戸時代の古式にのっとり真夏の土用に“献上寒晒しそば”としてお披露目される。