蓼科生活Vol.14 蓼科春景
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八ヶ岳山麓の山里を彩るヤエザクラ/八ヶ岳エコーラインの原村~富士見間より望む

フキノトウが顔を出し、八ヶ岳の冠雪が薄らいでくると、蓼科は春。
山里を彩る桜、健気な花を咲かせる山野草、清らかなせせらぎの水音…。
長い冬を越え、生命の息吹に満ちていく蓼科春景をお届けします。

春を迎え、里から山へ戻ってきたヒヨドリ

 春が、都心より一足遅くやってくる蓼科高原。例年、桜前線が太平洋沿岸部の都市を通過した頃に桜の蕾が膨らみはじめ、4 月下旬に満開を迎える。
 「チェルトの森」別荘地内では、自生しているヤマザクラが開花し、白や淡いピンクの花が芽吹いたばかりの森の中に彩りを添えている。

森を春色に染めるピンク色のヤマザクラ

清楚な美しさを見せる白いヤマザクラ

 林床の陽溜まりに目を向けてみると、枯れ草の間から顔を出したフキリンドウが、空を仰ぐように薄紫の花を咲かせている。スミレやキジムジロなど冬を越す多年草の花々は、小さいながらも力強い生命力に満ち溢れている。

木々の合間の日だまりで春の到来を告げるフキリンドウ

ハート形の花びらが愛らしいキジムジロ

草陰にひっそりと咲く可憐なスミレ

 別荘地周辺の集落や八ヶ岳エコーラインをクルマで走っていると、沿道に淡いピンクのソメイヨシノや濃い紅色のシダレザクラが咲き、目を楽しませてくれる。雪をうっすらと残した八ヶ岳をバックに咲く桜ほど、春の訪れを感じさせてくれる風景はないだろう。

強い生命力が伝わってくる、開花と同時に葉が開くヤマザクラ/八ヶ岳農場より望む

沿道を彩る鮮やかなシダレザクラと権現岳/県道17号線の富士見町付近より望む

 そして別荘地内や里の集落の桜とはひと味違う、絢爛豪華な花見が楽しめる名所として紹介したいのが、蓼科湖の向かい側にある「蓼科山聖光寺」。昭和45年に交通安全・一路安穏を祈願するために建立された寺院で、境内に約300本のソメイヨシノが植樹されている。標高1,200mの場所にあるため市街よりも開花が遅く、茅野市で最も遅いお花見スポットと言われている。

聖光寺の参道左右に咲き誇るソメイヨシノ

鐘楼を引き立てる満開の桜

境内を埋め尽くす桜に包まれた本堂は実に壮麗

 澄み渡る高原の空気の中、咲き誇る桜のなかに本堂や鐘楼が浮かび上がる情景は、厳かで心を浄化してくれるようだ。背後では蓼科山が春の訪れを祝福するかのように優しく佇んでいる。
 「蓼科山聖光寺」では、例年、桜が満開となる4月下旬からゴールデンウィーク頃に桜祭りが開催され、夜間はライトアップも行われる。

聖光寺から望む満開の桜に彩られた蓼科山

ビーナスラインに面した聖光寺の桜並木

赤岳と阿弥陀岳が背後に見える蓼科湖

 「蓼科山聖光寺」と道路を隔てた南側に広がる蓼科湖へ向かうと、ヤマザクラが湖畔に点在。水辺でさりげなく咲くヤマザクラは咲き乱れるソメイヨシノとは対照的で、純朴な風情が味わえる。

うららかな春の陽射しに包まれた蓼科湖畔を彩る満開のヤマザクラ

 都心より一足遅れてやってくる蓼科の春は、見応え満点。厳しい冬を耐えてきた樹木や草花の逞しくも美しい息吹を、ぜひ、体感していただきたい。

4月中旬以降、陽当たりの良い斜面に咲くカタクリ

春の芽吹きに包まれた別荘地内の矢元川

PHOTO / 2018年4月中旬~5月初旬に撮影