透明感あふれる自然光を受けて輝くダル・ド・ヴェールの作品。厚みのあるガラスを透過した光は多彩な表情をもつ
理想的な創作環境を求めて、蓼科高原にアトリエを構える工芸家が増えている。
「チェルトの森」柳川街区にアトリエを持つステンドグラス作家の桑原あずささんもその一人。
蓼科高原の透明感あふれる空気のなかで、
20年以上にわたり温もりある作品を生み出しているアトリエにお邪魔してみた。
大胆かつ繊細な作品を蓼科のアトリエで創作している桑原さん
パステルピンクのガラスを加工したファッショナブルな箸置き
空気が澄みわたる蓼科高原で見るグラスアートは一際鮮やか
年中無休で別荘地内の状況を確認する巡回パトロール
降雪時の道路交通を確保する除雪作業
カラマツの黄葉を湖面に映す槻の池。別荘地内には創作意欲をかき立てるモチーフがたくさんある
蓼科の光が生命を吹き込む
別荘オーナーから注文を受けた作品『チェルトの森の秋』。
依頼主の要望でフクロウとヤマガラが添えられている
桑原さんの別荘に迷い込んだ天然記念物のヤマネ
ヤマモミジを透過する光はステンドガラスに通じるものがある
特に2cm以上の厚いガラスを用いるダル・ド・ヴェールの作品は、同じ一枚のガラスでも表面の凹凸が異なり、ガラスそのものが描き出す光の表情をいかに活かすかが鍵を握っている。
桑原さんが生み出す花や森、小鳥や雪などのダル・ド・ヴェールは、シンプルな中に温もりあふれる豊かな表情を宿しており、光を受けて優しく微笑みかけてくる。蓼科の自然光の中で生命が吹き込まれているかのようだ。
原寸の設計図の上に並べられた厚みのあるガラス
雪の結晶の形に切り抜いかれたガラスのピース
夕陽を背に飛び交う鳥を描いた作品がリビングルームの壁にセットされている。温もりのある鳥のシルエットが印象的
蓼科アトリエ生活、第二章
旧別荘より幅も高さも拡大した新別荘のアトリエ。熱効率の高い薪ストーブを備えている
熊本県の重度心身障害児の施設に入れた作品『青い鳥ー生命の樹』。みんなが暮らす施設を“樹”で表現している
真冬でも別荘に着いた瞬間から室内が暖かく、都会の住宅と同じ感覚で過ごせるので滞在期間はさらに延びたという。
床面積を拡大した新築後のアトリエは、作品のスケールを広げるだけでなく、依頼主との打ち合わせやギャラリーとしても活用。
20年前、ステンドグラスの理想的な創作環境を求めて蓼科高原にアトリエを構えた桑原さん。同じ別荘地の同じ街区に住み替えるほど、『蓼科高原チェルトの森』への想いは強い。
透明感あふれる自然光、四季の彩り、純粋無垢な森の住人、雄大な山岳風景…。何年経っても色褪せない魅力に満ち溢れ、京都に居るとまたすぐに蓼科へ戻りたくなるそうだ。
蓼科と京都の往復を楽々こなす桑原さんの愛猫“じょんじょん”。
旅する17歳の女の子
アトリエ内には、窓辺を彩るインテリア小物など
大小様々な作品が展示されている
白い森に抱かれた住み替え後の新築別荘。
外がどんなに寒くても室内は宇宙船のように快適
高い断熱性を持つ角ログ材で組まれたリビングルーム。蓄熱式床暖房システムを備え、暖房器具は薪ストーブ一つで充分すぎるほど暖かい
地元に溶け込み、地元に根ざす
ここ数年はステンドグラスの制作で忙しくなり遠ざかっているが、野菜の直売所で知り合った地元のお婆ちゃんと仲良くなり、畑を借りて無農薬で野菜を作ったり、天下の奇祭̶御柱祭に参加したり、地元との交流も広げてきた。
飲食店用のポスターを貼り、大いに盛り上がった新そばパーティー
チャリティコンサートを行ったフルートアンサンブル〈奏-KANADE〉
無農薬にこだわって育てたズッキーニ。農家に匹敵する出来の良さ
桑原さんがズッキーニで作った“ トトロ”。子どもたちに大人気!
建物の快適性が向上し、創作もレクリエーションも思いのまま。
蓼科の魅力がさらに増したと語る桑原あずささん
2015年の日本ガラス工芸協会の公募展で入選した作品『雨あがり』。
現在全国を巡回中
長年の別荘生活で蓼科の風土にしっかりと溶け込み、地域に根ざした交流の輪を広げている桑原さん。
蓼科の大自然は、ステンドグラスの創作に適していることはもちろん、活き活きとしたライフスタイルの原動力になっているようだ。
取材協力/アトリエ ラ・ミュール
TEL・FAX:0266-76-6096 Mobilephone:090-3275-6394
〒391-0213 長野県茅野市豊平7695 チェルトの森柳川2-2-1