蓼科生活Vol.3 蓼科の光の中で
蓼科生活一覧 

森林公園のような深い樹林に包まれた飯田山荘。500坪超の庭に、バーベキューが楽しめるストーンサークル、シイタケの原木、山野草の花畑などが点在している

夢を叶えるなら、“いつか”より“今”がいい。
早ければ早いほど、長く濃く夢の時間を堪能できる。
10年前に蓼科へ移住し、夢を前倒しして叶えた飯田さん。
つくるよろこびをエネルギーにどんどん広がる蓼科ワールドを紹介しよう。

 ナラなどの広葉樹の葉を透過するやさしい光、緑の香りを乗せてそよぐ風。深い森の中に佇むログハウスで、パソコンのガイドブックなど数々の著書を執筆しているIT編集者の飯田成康さん。蓼科高原へ移住する前は、パソコン関連の書籍を手掛ける出版社に在籍し、会社と新宿区の自宅を往復する毎日だったという。
 多忙を極め、季節の移り変わりすら忘れるような都市生活の反動からか、自然への憧れが日増しに強くなり、新宿の自宅からアクセスしやすい蓼科高原へ、パートナーの松下典子さんとよく出掛けていたそうだ。
 からっと乾いた高原の空気や東京とは比較にならない静寂さに身を委ねるうちに、「将来、蓼科の自然の中でゆったりと暮らしたい」という夢を抱きはじめ、試しに幾つかの別荘地を見学したところ、『蓼科高原チェルトの森・流れ清水街区』でこれだ!という運命的な土地に出逢った。
 広々とした500坪を超える敷地面積。大自然の懐に抱かれているようなスケールの大きさに圧倒され、成康さんの足は釘付けになったそうだ。森が育む清涼な空気の中に居るだけでも気持ちいいが、ここなら、どんなライフスタイルでも叶えられそうな可能性を感じた。

カラマツなど昔植林された木を間伐し陽当たりを改善したところ、
小さかったクリの木が大きく生長したという

間伐した丸太でつくったオブジェのような餌台。毎朝、野鳥やリスがやってくる

 成康さんは日曜大工が趣味だったお父さんの影響を受け、子供の頃からモノづくりが大好きでよく家具などを作っていた。しかし、都心に就職後は作業スペースが確保できないためやむなく断念。いつの日か広々とした場所で木工家具づくりを楽しみたいという夢を持ち続けていたという。
 「取りあえず夢を叶えるフィールドを確保しておこう」と土地を購入したのだが、そうなると家を建てたくなるのが人の常。さらに家を建てたらあれもしたい、これもしたいとイメージがどんどん膨らみ、一日も早く蓼科で暮らしたくなってしまったという。
 当時のネット環境はまだADSLだったが、原稿のやりとりは充分可能だったため、蓼科への移住を決意。思い切ってフリーランスの編集・執筆者に転身し、夢のライフスタイルを前倒しで叶えてしまった。 
 典子さんの仕事も成康さんと同業のライターなので、移住に際して問題もなく、東京の住まいを打ち合わせや取材の拠点として残し、蓼科に生活の舞台を移した。

料理好きの成康さんが自作したキッチン。
ハワイから取り寄せた人工大理石のシンクなど自分好みのアイテムで仕上げている

洗濯機まわりをすっきりと演出する
手作りのランドリーキャビネット

オンも、オフも、とことん楽しむ

 同じ仕事でも、慌ただしい都心でするのと、静寂に包まれた蓼科でするのとでは、ストレスのかかり方がまるで違い、集中して仕事に取り組むことができるという成康さん。効率が上がった分、時間に余裕が生まれ、オフには長年の夢だった木工を思う存分楽しみ、書棚やリビングボード、洗濯機まわりをすっきりと見せる収納棚など、部屋にぴったりと合う家具を自作している。
 また典子さんは東京に住んでいた時から家庭菜園を借りて野菜を作っていたので、高原野菜で名高い蓼科高原での菜園ライフを心待ちにしていたという。八年前に小泉山の近くに50坪の畑を借り、成康さんと共に無農薬で野菜を作りはじめた。
 「仕事の合間にちょっと行って畑の世話をしている」とは言うものの、作物の収穫量は目を見張るほどで、トマト、エンドウ、エダマメ、ホウレンソウ、ジャガイモ、サツマイモ、タマネギ、野沢菜など多種多彩。ズッキーニ・トスカーナやクリーミーな白ナスなど、イタリアから取り寄せた珍しい野菜の種も栽培している。
 毎年、期待以上の収獲で、自分たちだけではとても食べきれず、友人やご近所にお裾分けしたり、夏休みシーズンには管理事務所前の野菜直売所で販売したこともあるという。

東京から一緒にやってきた愛犬ぷう助と成康さん。
リビングルームには天体望遠鏡をはじめ趣味のアイテムがぎっしり

リビングの窓側には90インチの巻き取り式スクリーンが用意され、
夜はシアタールームに早変わりする

欲しいモノは自分でつくる

 仕事も趣味も充実した今、蓼科へ移住して特に不満はないという成康さんと典子さん。あえて何か足りないものを挙げるとするならば、散歩の途中でふらっと立ち寄れるカフェのような場所がないことだという。
 「ちょっとお茶しながら友達とおしゃべりしたい時に立ち寄れる場所が別荘地内にあったらいいなぁと以前から思っていたんですよ」と典子さん。
 ご近所同士でお茶を楽しむ際も誰かの家にお邪魔することになるし、迷惑をかけていないか、次はウチへ招かなくてはとか、色々と気を使うが、カフェがあれば気兼ねなく集まることができる。少々人付き合いが苦手な人も、気の合う仲間と出逢えるかもしれない。カフェは交流の場としても役立つのだ。
 そこで成康さんと典子さんは、「無いのなら、自分たちで作ろう」と思い立ち、テニスガーデンのテラスにある厨房に着目。そこは以前、夏季限定の飲食店が営業していたが、ここ数年はクローズ状態になっていた。
 さっそくテニスガーデンを管理している鹿島リゾートのスタッフに、厨房利用について相談したところ、快く承諾され、カフェ開業に向けて準備を始めた。

趣味のようにカフェづくりを楽しんでいる成康さんと典子さん。
本業はIT編集者/ライターなので、パソコンやスマホの操作で分からないことがあったら気軽に相談してほしいという

緑に囲まれたチェルトの森テニスコート入口にある
“Café ペロンタ” のサイン

テニスガーデンは4G やLTE の電波もしっかり届く。
テラス席でコーヒータイムのかたわら仕事もできる

 成康さんも典子さんも料理をするのが大好きで、パスタなどオーソドックスなイタリアンをはじめ、食材の旨味が活きるオリジナル料理を生み出すシェフ並の腕前。自家製野菜をふんだんに使った料理で友人をもてなすことも多く、味についても折り紙付きだ。
 また典子さんのパンやお菓子づくりは本格的で、東京ではパン焼き教室を開いたこともあるほど。「つくる楽しさと、美味しいと言ってもらえる喜びを同時に味わえるカフェをオープンできたら、どんなに素敵なことだろう」と、二人の夢は、焼きたてのパンのようにどんどん膨らんでいった。

食材本来の旨味を味わってもらえるように、香辛料やニンニク、調味料はなるべく使わずに調理している日替わりランチ

オーナーの輪を広げるコミュニティカフェ

 そして今春、あったらいいなぁと想い続けてきた念願のカフェをテニスガーデンのテラスにオープン。愛犬家である成康さんと典子さんらしく、店名はスペイン語で犬を意味する『ペロ』と、植物を意味するスペイン語『プランタ』を組み合わせ、『カフェ・ペロンタ』とネーミング。ジューシーな焼きたてハンバーグをワンちゃんの顔が描かれたバンズでサンドした”ワンバーガー “が一押しメニューだ。
 自家製にこだわったパン、パイの生地、ソース、ドレッシング、ベーコンの燻製。安心して食べられる無農薬の野菜。食材本来の旨味が味わえるシンプルな味付け。えぐみの原因となる豆の中の渋皮を取り除いたチャフ除去コーヒーなど、成康さんと典子さんが美味しい!と思ったものを厳選してメニューを作っている。

かわいいワンちゃんが描かれた人気メニューの“ ワンバーガー”。
ボリューム満点でおすすめの一品

美味しいだけでなく遊び心もたっぷりな典子さんの手作りパン。
かわいい猫ちゃんのアンパン“ にゃあんぱん”(右)と
星降る里の“ しなのんロール”(左)

手書き看板と可愛らしいプチメニューがほっこりと出迎えてくれる

サクサクの生地の中に濃厚ガナッシュがたっぷり入ったショコラタルト。
ほんのりビターで甘いものが苦手な人でもやみつきになるはず

 オープン後3ヶ月ほど経ち、素材にこだわった手作りの味は着実にファンを増やし、ウォーキング中に立ち寄ってパンを頬張る方、文庫本片手にティータイムを過ごす方、タルトを食べながら友達同士でおしゃべりを楽しむ方などで、『カフェ・ペロンタ』は今日も賑わっている。
 仕事に、趣味に、そしてカフェを通したコミュニティづくりに全力投球の成康さんと典子さん。
 まさに”思い立ったが吉日!“大自然からパワーをもらって、夢を叶えたくなる。それが蓼科なのだ。

Information│Cafe ペロンタ

信州地粉のオリジナルわんバーガーや季節の果物たっぷりのタルトが味わえる
森のカフェ。夏には、小泉山の麓の畑でとれた自家野菜の料理も登場予定。
テイクアウトやデリバリー(合計1,500 円以上)もやっている。

℡.050-5278-4748
〒391-0213 長野県茅野市豊平 7702 チェルトの森内
◎営業時間/ 11:00 ~ 15:30(定休日:火・水)
https://www.facebook.com/perronta/
http://www.officekagen.jp/perronta/index.html